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Channel: 錦之助ざんまい
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キネ旬の映画評『冷飯とおさんとちゃん』

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 古いキネマ旬報を数冊購入して、ページをめくっていたら、昭和40年5月下旬号に『冷飯とおさんとちゃん』の映画評があった。映画評論家の大黒東洋士(おおぐろとよし)が書いたもので、とくに第一話『冷飯』を手放しで絶賛していて、わが意を得たりという気持ちになった。



 大黒は、『冷飯』について、まず「底抜けに明るい描き方で、思わずオヤッとなるくらい珍重すべき風味」があり、従来の時代喜劇とは「まるで違った新しい内容と語り口である」と指摘し、「時代劇の今後のあり方に示唆するところまことに大」であり、「『冷飯』の持つ意義は大きい」と書いている。そして、詳述できないのが残念であると断った上で、具体的には次のような点をあげている。

――四男大四郎が自分の恋を屈託なく母に打ち明ける挿話など、かつて時代劇になかった微笑ましい明るさである。冷飯の先輩の叔父貴と大四郎との冷飯談義もおもしろい。母を中心にむつみ合う兄弟四人の心暖まる快さ、初めて料亭に上った大四郎の言動のおかしさ愉快さ、その様子に隣室の中老が思わず吹き出し、そして大四郎の人柄に惚れるが、この辺の演出のうまさは絶妙である。



 第二話『おさん』は、「むずかしい題材でうまくこなされていない」「説明的なナレーションを多用」しすぎて「もどかしい」などと苦言を呈しながらも、「死んでいった女の業の悲しみには、ついホロッとさせられるものがある」と書いている。

 第三話『ちゃん』は、古くさい人情話ではあるが、「夫婦、親子のこまやかで素朴な愛情が笑わせ、そして泣かせる」と言い、「心暖まる心憎い一編である」と褒めている。

 そして、最後に出演者について触れ、こう書いている。
 
――中村錦之助の一人三役が見事である。一話の小沢昭一、二話の新珠三千代、三話の女房役森光子、長男役伊藤敏孝の好演を買う。おさん役の三田佳子は難役だけにムリだった。




*大黒東洋士(1908~1992)
 高知県出身。早稲田大学中退。昭和3年松竹蒲田撮影所脚本研究所の第一期生として池田忠雄、柳井隆雄らとシナリオを学ぶ。のち「映画時代」編集を経て、「映画之友」編集長となる。戦後、「映画世界」編集長をつとめ、昭和25年よりフリーになり、新聞、雑誌に数多くの映画評を書く。錦之助を高く評価した映画評論家の一人である。



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