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Channel: 錦之助ざんまい
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『ちいさこべ』を見る

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ラピュタ阿佐ヶ谷通いが続いている。
先週土曜は、支配人の石井紫(ゆかり)さんに頼まれて、私の作った錦之助関係の本を6種類持っていった。ロビーの映画書籍コーナーに置いて、販売してくれるというのだ。ラピュタでは、これまで東映作品の特集があるたびに、何度も売ってもらっている。ちょぼちょぼしか売れないのだが、ジュンク堂や紀伊國屋書店よりも売れるので嬉しい。
ラピュタの石井さんとはもう十数年の知り合いである。映画館には珍しい女性の支配人で、しかも昔から評判の美女。最初に会った時は、可愛らしい女子大生のようだったが、今もほとんど変わらない。彼女のプライベートなことは全然知らないが、きっと映画が恋人なのだろう、と私は勝手に思っている。
で、土曜は本を納品した後、『娘の中の娘』を見た。『恋愛自由型』と同じく、ひばりちゃんと健さんのラブ・コメディで、監督も佐伯清だった。しかし、こっちは出来があまり良くなかった。

昨日は、『ちいさこべ』を見にいった。
昼過ぎに行って、1階のロビーの書籍コーナーを見ると、テーブルの上の真ん中に、他の出版社の本を脇にのけるかのように、私の持っていった本がずらっと平積みで並んでいる。
石井さんがいたので、「いいとこ置いてくれて、ありがとう!」と言うと、「あのー、もう2冊売れちゃったのがあるんで、また今度持って来てくれませんか」と石井さん。錦之助映画ファンの会の記念誌「青春二十一」の第三集なのだが、3冊入れて2冊売れてしまい、残り1冊。錦ちゃんファンが買ったのだろう。
ロビーに映画狂の落語家・快楽亭ブラックさんがいたので、声をかけ、ちょっと話をする。『ちいさこべ』は何年か前にフィルムセンターで見たそうだが、いい映画だったので、また見に来たとのこと。
ラピュタは2階が映画館になっていて、切符の番号順に案内されて外階段から2階へ上がっていくのだが、48席の小さな名画座である。入りが悪いと数名しかいない寂しい時もあるが、この日の『ちいさこべ』は、雨の日にもかかわらず、30名以上入っていたかと思う。



さて、『ちいさこべ』(田坂具隆監督、錦之助主演、昭和37年東映京都作品)、171分の大作である。私がスクリーンで見るのは3度目なのだが、今度も途中で泣けてしまった。前回も前々回も同じ箇所だった。この映画を見たことのない人には分からないと思うが、焼け跡で子供達が人形劇をやる場面になると、目がうるんでくる。私だけではなく、見た人の多くがそうなのではないかと思う。感動して胸が痛む映画というのは、そうざらにあるわけではないが、私にとって『ちいさこべ』はその一本である。山本周五郎の原作は、ずいぶん昔に読んだことがあるが、映画の方が感動的だった気がする。

映画が終わって、感動さめやらないまま席を立とうとすると、ラピュタ館主の才谷遼さんも見ていた。彼とも知り合いなので、挨拶すると、早速お茶でも飲みに行こうという話になる。
で、才谷さんと近くの喫茶店へ行き、1時間余り雑談。また、道楽で映画を撮ったと言うので、その話を聞く。現在編集中とのこと。宣伝用のチラシをもらう。原案・脚本・監督才谷遼、映画のタイトルは『ニッポニアニッポン』。
才谷さんと別れて、馴染みのラーメン屋で夕食をとり、ラピュタでもう一本映画を見た。

『カレーライス』(渡辺祐介監督、昭和37年東映東京作品)。初めて見る映画である。阿川弘之の小説が原作だそうだが、その小説は知らない。江原真二郎と大空真弓が主演の恋愛喜劇で、出版社を首になった二人がカレーライス屋を始める話なのだが、出来のほどはまあまあだった。面白く作ろうとして、所々で客受けを狙ったのだろう。封切り時のことは知らないが、今見るとあざとさが目立って、笑えない。共演者の若水ヤエ子、世志凡太は、当時は人気のあった喜劇役者だったが、もう見るに堪えない。
それに江原さんには悪いが、こういう三枚目のような役には向かない感じがした。江原真二郎と言えば、今井正監督作品の『米』『純愛物語』の青年役、時代劇では内田吐夢監督作品『宮本武蔵』五部作での吉岡清十郎役などの印象が強すぎるからだろう。
私が見たこの回は客の入りも悪く、10名ほどだった。
『カレーライス』、才谷さんの話だと、ラピュタで上映するのは二度目で、前回は江原さんご自身が見に来たそうだ。才谷さんがこの映画、面白いから見てよ、と勧めるから見たのだが、残念ながらそんなに面白くなかった。



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